想い出の赤い宝石の指輪についてお話しします。
残念ながら、この指輪は無くなってしまいましたが、
今でも、当時の想い出と共に、心の中で輝き続けてくれている、
大切なお気に入りの指輪です。
人は両親を選んで産まれてくると言われています。
私が選んだのは、
人が持つ計り知れないパワーを内に秘め、楽しげに歌を口ずさんでいる母と、
仲間と共に、世界の海を駆け巡る、船乗りの父でした。
幼い頃、両親は私を大切に育ててくれました。
特に父は休日、出かける先々に、
私を一緒に連れて行ってくれました。
青空に舞い上がるシャボン玉
斜面一面に咲きそよぐ花
かわいらしい小動物や、不思議な動きをする昆虫達
台風が去った後の港へ迷い込んだ巨大な魚
晩ご飯に釣り上げた縞模様の石鯛
その石鯛は、網に入れ、磯で活かしていたら、
持ち帰る頃には、カニに半分食べられていて、
家族で大笑いしたこともありました。
どれも、記憶の中の大切なワンシーンです。
その頃の父は、
私を男の子のように思っていたかもしれません。
何故なら、
ある年の誕生日のプレゼントは、
スターが映画の中で持っていた、2丁拳銃のおもちゃ。
またある年のプレゼントは、
ネイティブアメリカンの羽根飾。
といった具合だったからです。
私の方も、それを疑問に思うことなく、
喜んで受け取っては、近所の男の子達と遊んでいました。
私がもうすぐ5歳になる直前のある日、
そんな我が家に、元気な赤ちゃんが誕生しました。
弟です。
父に連れられて、母と弟がいる産院に行くと、
弟が、真っ赤な顔をして眠っており、
私は思わず、お猿さんのよう!と感じました。
そして、迎えた私の誕生日。
父の同僚も何人か寄ってくれています。
少しライトを落とした部屋の中では、
ケーキに立てた5本のロウソクが点火され、
オレンジの炎に照らされながら、
みんなでハッピーバースデー♪を歌いました。
ロウソクを吹き消して、次に明かりが灯されると、
そこには、プレゼントの山がありました。
ウルトラマン怪獣の人形や、お菓子などに、
大喜びの私。
プレゼントの山を、1つ1つ手にとって見終わった頃、
父が私を呼び、小さなプレゼントを手渡してくれました。
それは
金色の地金に、赤い宝石が付いている指輪でした。
私はその指輪を大層、気に入り、
どこへ行くにも持ち歩いていました。
残念ながら、この指輪は、
引っ越しの際、無くしてしまったのですが、
この先も、心の中で輝き続け、忘れることはないでしょう。
私にとって、大切なプレゼントです。
今、大人になった私は、
自分自身がジュエリーの仕事を依頼される立場となり、
大切な人への愛のこもったプレゼントのジュエリーの制作相談をお受けします。
その度に、
私の心には、幼い日の懐かしい想い出が蘇り、
暖かな気持ちが満ちてくるのです。